【白熱教室】プレーマチャンドラ・チンタカ先生

 2022年冬号_vol.46 収録

 前回の大口裕之先生( 応用化学科) に続いて久しぶりの『白熱教室』。画像処理・ロボティクス研究室のプレーマチャンドラ・チンタカ先生( 以下チンタカ先生) にお話を伺ってきました。電子工学科内ではお馴染みの先生です。

チンタカ先生の自己紹介

 工学部電子工学科、画像処理・ロボティクス研究室のプレーマチャンドラ・チンタカです。スリランカ出身、現在44歳です。

  • AIを使った画像処理
  • 車いすの自動化
  • 災害地派遣ドローン

について現在研究室で研究をしています。

チンタカ研PR

 研究室の学部生が米国電気電子学会の学術雑誌に掲載。これが国内で初めての論文賞の受賞となった。自分の研究室から学生がこのような賞を受賞することは大変嬉しいと語った。就活もチンタカ研は強い。日本の有名企業はもちろん、世界の有名企業に決まった学部生もいる。

チンタカ先生の来日経歴

 20歳の時にスリランカの大学を中退して、スリランカの交換留学生として日本に来ました。米子高専三年生に編入し、その後三重大学に進学しました。三重大学で学士号と修士号を取り、30歳で名古屋大学にて博士号を取りました。研究を続けるにもお金がかかります。当時は研究関連の仕事や、英語も話せたので通訳の仕事をしていました。国立大学だったので何とか自力で稼ぎながら続けることが出来ました。名古屋大学を出た後は東京理科大学で4年間助教授をし、そして2016年4月に芝浦工業大学に来ました。

チンタカ先生にとって日本とは

 なぜ日本に行こうと思われたのですか。

 スリランカの自宅にホンダのバイクとトヨタの車があって、それで日本の技術力の高さに感銘を受けて日本について色々と調べたことがきっかけです。調べていくうちに日本のアニメ・服・食等、日本の文化にも興味を持ち、いつか日本に行ってみたいと思っていました。

 日本はイメージと違いましたか。

 はい。日本は調べたり聞いていたイメージとは違いました。2000年に日本に来て最初の1年目は渋谷の近くに住んでいました。当時の渋谷にはガングロが多く存在していて日本がよくわかりませんでした(笑)。まだ日本語を話せなかった時期なので。気になっていたので、日本語をある程度話せるようになってからガングロの方に話しかけてみました「それは何ですか?」と。「ファッション」と返されさらによくわからなくなったことを覚えています。 それと、日本人は日本語中心で生活しているなとも思いました。日本人は私のような外国人にも日本語で話しかけるんですよね。スリランカでは絶対にない光景です。日常会話はスリランカ語でも見るからに外国の方には英語を使うので。

ドローン研究との出会い

 ドローンは理科大で助教授をしていた時に教授の趣味だったドローンを一緒にやらないかと言われて始めました。ドローンがまだ無名だったころです。移動と飛行が可能なロボットの開発というのは、当時とても最先端でした。今のドローンの普及に貢献できたかな。貢献できていたら嬉しいですね。

研究テーマについて

 チンタカ先生の研究テーマ( 画像処理、車いすの自動化、災害地派遣ドローン) について詳しく教えて頂きました。

画像処理研究

 画像処理は三重大学在籍中に興味を持ってから今でも続けている研究です。画像を構成する一つ一つの粒である画素には値があってそれを読み解くことで、例えば自動運転とかに活用できるんですよ。画像から物体認識結果が見えるので、見たままのことが分かりやすく結果として出てくるところが好きなポイントです。

車いすの自動化について

 車いすの自動化の研究は学生からの提案でコロナ禍に始まりました。まずは、どうすればより障がいを持っている方が暮らしやすくなるのかというところから考えました。手元のスティックで運転できる電動車いすって既にあるじゃないですか。最近だと脳波を読み取って動かすタイプとか。でも障がいのある方にとって手元の操作や、脳波を送ることすら負担になるのではないかというのが私の考えです。ならば目的地を伝えればライントレーサーのように点字ブロックに沿うような車いすを作ることで解決できるのではと。いわば自動運転の車いすです。AIが画像処理をし、標識・信号を見分けて自動運転というのがこの研究の目標です。

災害地派遣ドローンについて

 災害地は地上に多くの障害物があります。災害地でドローンを使うメリットは、地上では困難な道のりでも空なら一瞬で駆けつけることが出来るところです。また空からだと広範囲の捜索が可能なため、救助の点においても優れています。

 たしかに空は障害物もなくて、移動の面では効率的ですね。一つ質問なのですが、上からだと隠れてしまう箇所はどのようにするのでしょうか。

 ドローンにスピーカーとマイク搭載します。例えば「誰かいませんか」と呼びかけるんです。返事があればマイクで音を拾って位置を特定します。ですが、ここで一つ大きな問題があります。

 羽の音です。

 マイクと羽が近いのでマイクで拾った音からドローンの羽の音を消すことが課題です。これもAIのチカラを使いたいと思っています。まずは、独自のAIの学習方法でAIに羽の音のパターンを学習させます。学習したドローンの羽の音のパターンを混合音声から引くことが出来ればクリアな音にすることが出来ます。これも最終的にはAIに任せる予定です。

研究をする意義とは

 科学は長い研究の証です。昔の研究者たちの知識を今の私たちが消費をしているのです。研究をするというのは次の世代のために新しい知識を作り出すことだと思っています。 新たな知識を作ることで人間は豊かになります。将来の世代がより豊かに暮らせられるために、今私たちが研究を続ける必要があります。

『これからの人類のために新しい研究を』

 研究は興味のある人だけでいいと思っています。興味のない人にとっては難しいことだし、何より楽しくないことです。そういう人は研究を続けることが難しいですし、新しい発想を持てません。だから無理に研究をさせたいとも思いません。興味を持った人だけでいいのです。

 もちろん最初興味がないことでも、研究を続けていくうちに興味が出ることもあります。自分のドローンがそうでした。大学にいる間は色々なことに触れますし、出会いやきっかけもたくさんあります。学生にはこれらを大事にしてほしいです。そして、興味の持てることをみつけてほしいです。

学生へのメッセージ

 先程のことと被ってしまうのですが、学生のうちに色んな事に興味を持つことじゃないですかね。何事も楽しく取り組むことが大事だと思っています。それと、個性を守りながら進む道を選んでほしいです。自分の得意なことや苦手なこと、好きなことや好きじゃないこと、自分の向き不向きをしっかりと知る。しっかりと知った上で自分の今後進んでいく道を選んでほしいと思っています。

(取材・編集:安里)