砂町商店街

砂町商店街をご存じでしょうか。豊洲と同じ江東区内にある昔ながらの商店街です。実は、芝浦工業大学のある研究室が、この商店街に関わっています。今回は「まちづくり」という観点から、この商店街を見ていこうと思います。

最初に砂町商店街で実際にお店を経営している方々にお話を伺いました。

みどりや

 お茶と和菓子がおいしいお店。このお店のざらめせんべいが私のお気に入りです。

〇砂町商店街のいいところを教えてください。

 お客様と店員さんの距離が近いところですかね。いつも気軽に「こんにちは」とか「どこ行くの」みたいな感じでお客様との距離が近いのはやっぱり大事だと思います。

 スーパーじゃなくてこういう商店で買いたいっていう地元のお客様がいたり、それ以外にも遠くからたくさん買いに来てくれて、ここに来るのが楽しみって言ってくれる人は結構多いです。

 後は、コロナが少し緩和されていたのか、外国の方に来ていただけることが多いですね。コロナになる前はツアーなどがあったのですが、最近は個人で来ている方が多いかもしれません。

〇将来、砂町商店街がどうなって欲しいと思いますか?

 大きいスーパーもあるけどこっちでしか売ってないものを売ったりして、お客さんを呼び寄せなきゃいけないのですが、これからも活気があってお客さんが来て楽しいと思えるお店作りは打ち合わせていきたいなと感じます。今のお茶屋さんがどんどんなくなってきちゃっているので、みんなスーパーなどのいろいろなお店で買ってしまうかもしれません。それでも、お茶はお茶屋さんで買いたいと確かに思えるものを出しています。自分がお茶屋だから思うことかもしれないけど、それはうちの強みですね。自分たちがお茶を飲んで味も色も納得したお茶じゃないと、社長は仕入れてくれないから(笑)

銀座ホール

『孤独のグルメ』でも紹介されていた食堂。伝統あるお店で地元の人に愛されています。

〇砂町商店街のいいところを教えてください。

 顔を合わせてコミュニケーションをちゃんと取るところです。例えば、お金のやり取りでお釣りを出す時にも、目と面を合わせてお釣りを渡すとか、些細なことなんですけど。大型店にはそういうことがないわけですよ。もうレジ見てありがとうございました、で会計を済ましちゃったりします。商店街は路面店だから、そういう形でお客さんとのコミュニティを取っていかないとダメだと思います。

〇将来、砂町商店街はどうなって欲しいと思いますか?

 江東区のキャッチフレーズにスポーツと人情に熱いというものがあるんです。しかし、人情も時と場合によるもので、お客様それぞれに合った対応をしていかなければならないということは、自分なりに本を読み勉強していかなければならないと思います。それと同じように、今の状況を把握するということが大事なんじゃないですかね。時代に合わせて行かなければならないけど、昔のものでもいいものはたくさんあるから、臨機応変にそういうものを使っていくためにも、現状把握は必要だと思います。

志村研究室

 今回は砂町商店街のまちづくりに携わっている志村秀明教授にお話を伺いました。志村研究室では江東区やUR都市機構と共同でまちづくりをしているようです。

「この商店街は密集市街地で木造の建物が密集して建っている、言ってしまえば災害が起きた時大変な場所になっています。だからこそ、防災性能を高めなくてはなりません。道を広げたり、木造の密集しているところに空気を抜けさせたり、不燃化で鉄筋コンクリートにします」

 しかし、そう簡単にいかないのがまちづくりの難しいところだと志村教授は話します。

「砂町商店街には、昭和の香りがあります。無理に建物を建て替えるなどの、乱暴なことはできません。そこで、みんなで良い使い方を考えましょうとなったとき、研究室や学生たちが入った方が、地元の人たちも協力しやすくなります。そのようなこともあって、様々なことを研究室の学生とお手伝いしています」

 最近だと、空地を使ってハロウィンの工作イベントを実施したり、街の模型を作っているとのこと。

「砂町商店街の近くには大型ショッピングモールがあるから、若い人はみんなそちらに言ってしまって、商店街に平成の人が減っているんですよ。そこで、親子で参加できるようなイベントを企画して、客層を変えるというのを、空地の活用と一緒に行っています。

 また、別の場所なのですが、再開発が必要な大島という地域で、再開発とともに防災性を高めるといったこともしています。そこでは再開発をしたい人たちと反対派の人たちがいて、難しいところなのです。そこに学生たちと行って、街の模型を作ってシミュレーションします。模型を作るとどれだけ危ないのかが実際分かるからです。そのことに対して、我々がオブラートに包まないと言えないようなことを学生がいろいろ言っちゃうんです(笑)中立で客観的な立場だし、学生だし」

 色々なことに取り組んでいる志村研究室。今はどのようなことを進めているのでしょうか。

「今年は都市計画のワークショップをやっています。そこで、道を広げたい、商店街はお店だけにしたいという案が出ました。

 実は住宅が建ち始めていまして。今は全国的に個人経営のお店が流行らず、みんな大型のスーパーマーケットに行ってしまいます。そうなると、店舗をやろう、という人が少なくて、住宅としての方が売りやすいんですよね。でも、住宅を作っていくと、商店街ではなくなってしまいます。これは砂町商店街に限らず、どの商店街でも問題になっています。だから、そういった建物の一階には必ず店舗を入れるという用途制限をかけましょう、という地区計画が出てきていますね」

 他にも、ワークショップでは電柱の地中化についても話し合っているようです。

「電柱があって電線があることは、日本の景観としては普通のことなのですが、欧米の方ではあまり見かけません。おまけに、今の電線って昔の電気の線だけではなく、ケーブルテレビの線や光ファイバーの線がくっついて、とても太くなっています。電柱は何かあったら倒れてしまう可能性があるから停電の危険もあり、景観を損なってしまったりもします。

そこで、もし電柱がなくなれば、そういったデメリットがなくなり、道路を目一杯使えるようになるので、商店街でも地中化を進めようとしていますね。だけども、工事している間、お店の商売をどうするかといった意見もあります。それもまとめて地区計画を作って、少しでもいいまちづくりができるようにといったことを目標にしています」

 かなり大がかりで大変なことを研究室で行っていますね。いい意味であまり研究室でやらないことというか。

「とても実践的で人間的なことをしているので、学生にとって本当に良い勉強や経験になります。学生たちも大変だけれども、やる気をもって取り組んでいます」

 砂町商店街にひとこと、よろしくお願いします。

「商店街を中心とするまちの魅力を大切にしていきながら、安心、安全なまちづくりをみんなで話し合って実現していきましょう」

感想

 砂町商店街は私の地元だったのですが、今回の取材で初めて知れたこともたくさんありました。また、大きくなるにつれて疎遠になっていたお店の方々が、私の名前を覚えてくださっていたりして、見守られながら育ってきたんだとしみじみ感じております。これからも、砂町商店街、ひいては江東区の街づくりを見続けていきたいと思いました。

 改めて、取材に協力して下さったみどりやさん、銀座ホールさん、そして志村秀明教授、本当にありがとうございました。

(取材:中村・大橋 編集:大橋)